ATRO: ロボティクスのための自動化技術
機械まわりのあらゆる作業にぴったりのロボットが、棚からすぐ取り出せるように並んでいる――そんな未来を想像できますか?小型機械では作業空間が限られるため、短いリーチでありながら比較的重い部品を挿入できるロボットが必要となる場合があります。また、完成品をパレットに積み上げるためにリーチの長いロボットが必要な機械もあります。さらに、固定された供給位置から搬送用のコンベアベルトへ、高速でピック&プレースを行う機械もあります。このような様々な用途に対応できるロボットを常備するのは簡単なことではありません。そこで、ベッコフのモジュール式ロボットシステム「ATRO」を使用して、既存の標準モジュールからタスクに合わせて自由にカスタマイズしたロボットを組み立てることにより、多大な労力をかけずに必要な柔軟性を実現できます。
ベッコフが開発したATROのモジュール性は、ユーザに確固たるメリットをもたらします。必ずしも6軸の多関節ロボットがタスクに適したツールであるとは限りません。多くのピック&プレース工程では、3自由度または4自由度で十分です。これにより軸数が減り、コストや重量を抑えられます。そして軽量化によって生じた余裕を利用することで、より大きな積載量を実現できます。ATROでは、同じモータモジュールおよびリンクモジュールを使用して、多様な動きを設計できるため、在庫の種類を減らしつつ、柔軟性を高めることができます。
モジュール式設計による高い柔軟性
ATROはモジュール式の産業用ロボットシステムで、組立・ハンドリング技術の分野における様々な用途向けに、最適化されたロボット構造を柔軟に組み立てることができます。標準化されたドライブ機能を統合したモータモジュールと、様々な形状および長さのリンクモジュールによって、ほぼ無限の組み合わせが可能です。さらに、TwinCAT制御プラットフォームに完全に統合されているため、実績のある幅広い自動化機能に直接アクセスできます。機械制御、ロボット制御、安全機能、ビジョン、状態監視、さらにエッジデバイスやクラウドシステムへの接続まで、PCベース制御プラットフォームはあらゆる機能を統合します。
また、エンドエフェクタへの外部電源ラインを省略できれば、さらに利便性が上がります。これにより、ケーブルが常に邪魔になることもなく、ねじり応力のためケーブルを定期的に交換する必要もなくなります。さらに、ケーブルがなければ、ロボットの全軸を無限回転できるようになります。これを実現するため、すべてのATROモジュールは、 データ配線、電力配線および2チャンネルの流体配管を内蔵します。必要な配線および配管はロボットの土台部分であるベースモジュールから接続し、モータモジュールおよびリンクモジュールを経由してエンドエフェクタまで伝送されます。アクティブなモータモジュールは、全軸の無限回転が可能となるよう設計されています。
ATROは、モジュール性と柔軟性を兼ね備えた産業用ロボットシステムです。データ配線、電力配線および流体配管を内蔵し、全軸回転が可能です。ATROはPCベースによる機械制御システムに統合されています。異なる構成で同一モジュールを使用し、再利用することもできるため、在庫コストを削減し、スペアパーツの必要性も低減します。
一般的な要件と特性
ロボットは通常、ツール、センサ、安全装置などの追加部品がなければ特定の機能を果たすことができないため、部分的に完成した機械(半完成機械)とみなされます。ロボットが機械に取り付けられ、必要な部品が装備されて初めて、完成した機械(完成品)となります。欧州機械規則(EU) 2023/1230は、部分的に完成した機械にも適用されるため、メーカはこれに準拠し、安全衛生要件を保証する必要があります。産業用ロボットの安全性には、欧州整合規格DIN EN ISO 10218-1およびDIN EN ISO 10218-2が適用されます。これらの規格の新版は2025年初頭に発表され、整合が完了次第、間もなく施行される予定です。移行期間終了時(2027年予定)には、市場に新たに投入されるすべての産業用ロボットに適用されます。
機械メーカがATROモジュールを使用して希望のロボット構成を組み、これを機械に組み込む場合、ロボット部分についてISO 10218-2の要件を満たす必要があります。ATROシステムは、動きを構成するハードウェアモジュールに加え、これらの要件を正確に満たすソフトウェアモジュールと、事前テスト済みの安全テンプレートとを組み合わせて提供しています。
多用途で設置が簡単な取付機構
ATROの各モーターモジュールは、ロボットの1軸または1関節に対応する完全なドライブシステムです。システムは、ブレーキ、ギアボックス、SafeMotion機能を備えた分散型の48V EtherCATドライブで構成されます。つまり、必要な外部コンポーネントは電源と制御システムのみであり、制御盤内のスペースを大幅に削減できます。
アクティブなモーターモジュールに加え、ロボットの設計に使用できる機械的にパッシブなモジュールもあります。ATROモジュールは、ねじで組み付けるだけで、ATROインターフェースが堅牢な機械的接続を確立するとともに、内部の電源・データ配線および流体配管も接続します。組み立ては一人で行うことができ、メンテナンスなどの場合でも、各モジュールを簡単に交換できます。
ベースモジュールは、ロボットを架台や、壁、天井などに取り付けるために使用します。ベースモジュールの側面または底面から内部配線および配管に接続できます。電力供給とEtherCAT・イーサネット通信を集約した実績あるハイブリッドコネクタは、シンプルなプラグイン式の接続を可能にします。ロボットの48V電源は、抵抗付きブレーキチョッパーによってベースモジュール内で安定化されます。
ロボットアームを形成するために、様々な形状と長さのリンクモジュールが提供されています。リンクモジュールは、他のATROモジュールと同様にEtherCATデバイスであり、機械的特性が電子タイププレートとして付属しているため、コントローラは構成をスキャンして、モーション制御用の計算ルールを自動的に選択できます。
ATROインターフェースはエンドエフェクタとのインターフェースとしても機能します。ISOインターフェース対応グリッパー接続用に、内部配線・配管をプラグ式端子に導くフランジモジュールを提供しています。ツールの完全統合を希望するメーカには、ATROインターフェース付きのフランジセットをご用意しています。
機械制御とロボット制御が一体化
これまで、ロボットを機械やシステムに統合する際の主な課題のひとつは、システム間のインターフェース管理でした。ロボットコントローラを機械制御システムに接続する必要があり、ロボットコントローラと機械コントローラの両方でビジョンや協調動作などの自動化機能が必要とされます。動的な用途においては、このようなシステム統合はリアルタイム対応のインターフェースに基づいて行う必要があります。これにより、機械軸の動きをロボットのエンドエフェクタ上のツールと連動させ、カメラによる製品検出と同期させることができます。
TwinCATオートメーションプラットフォームは、これらすべての機能をPCベース制御システムに統合しています。これにより、すべてのデバイスで、あらゆる機能の最新情報を同時に処理することができます。これには、システムやロボットの機能安全に関する情報や状態も含まれます。これらの情報は、これまで安全I/O信号を介してシステムに接続されることが多くありました。
TwinCATによるロボット統合では、一方でモジュール式キネマティクスの設定を行い、他方でモーション制御のプログラミング機能を使用します。3Dの可視化ツールは、モジュール式キネマティックスの設定をサポートします。ここでは、すべての種類のATROモジュールを選択して、希望の組み合わせを構成できます。STEPファイルをインポートすることで、機械環境へのロボットの組み込みも可視化できます。この設定は、TwinCAT開発環境にロードできます。同時に、必要な準備や接続がすべてTwinCATシステム上で自動的に作成されるため、ユーザはモーション制御のプログラミングをすぐに開始できます。
実際のコントローラにオンライン接続されている場合には、3D表示をロボットのポーズと動きのライブビューとして、またはシミュレーションビューとして使用することもできます。
プログラミングを容易にするために、豊富なロボット用のライブラリが用意されています。ライブラリは、個々のモジュールを抽象化してロボットインスタンスとし、そのインスタンス上で必要なパラメータ(長さ、慣性質量、動的モデル、変換方程式など)を設定できます。このロボットインスタンスは、簡単な動作コマンドで操作できます。
ロボットの試運転と操作のため、直感的なユーザインターフェースが開発されました。このインターフェースは、TwinCAT HMIをベースとした要素を表示し、個々の軸やデカルト座標でのジョギングなど、標準に準拠したロボット操作を可能にします。
すでに設定に使用された3D表示は、オンラインビューとしてここで表示することができます。ビジョンや、連続信号曲線などを表示するためのスコープも組み込むことができます。
アプリのコンセプトに基づき、タスク固有の機能を個別に表示することができます。ロボットの移動や、ウェイポイントの保存・編集を行う機能があります。別のアプリケーションでは、動作コマンドやグリッパーコマンドを待機状態と組み合わせて、簡単なシーケンスプログラムを作成できます。複雑なモーションプログラムも、プログラミング用コンピュータで同様に行うことができます。もちろん、使い慣れたPLC環境、つまり機械のプログラミング環境に統合することもできます。
HTML5ベースのWeb表示を採用しているため、機械の操作パネルやタブレット、ティーチングペンダントなど、ブラウザを使用してインターフェースを表示できます。
ISO 10218-1:2025の安全要件には、ツールセンターポイント(TCP)の直交速度だけでなく、肘などのロボットの露出部分の安全監視や、様々な安全停止機能が含まれます。この目的のため、ベッコフではTwinCAT Safety PLCを使用して、標準的なベッコフ産業用PC上でSIL3対応のセーフティロジックを提供しています。これに基づいて、ATROモータモジュールの各軸の安全位置をもとに、TCPおよびその他の露出した軸の安全な直交速度を監視するためのファンクションブロックを提供しています。これらのファンクションブロックの応用例は、認定機関によって認証されており、ユーザが必要な安全レベルを達成するのに役立ちます。
まとめ
ATROシステムは、ハードウェアおよびソフトウェアモジュールの一貫したモジュール設計により、設定、プログラミング、操作、安全モニタリングにおいて、アプリケーションに高い柔軟性を提供します。従来の直列型ロボットの運動に加え、パッシブなリンクモジュールを追加するだけで、画期的な新しい構成を実現できます。軸1の無限回転機能により、ワークステーションに最も効率的かつ最短ルートで到達可能です。第1軸の上にT型モジュールを追加すると、双腕ロボットが実現し、生産性が2倍に向上します。この位置にX型モジュールを追加すると、4アームのロボットになります。ただし、5自由度や6自由度は求められていないケースがほとんどです。同一モジュールから、3軸ハンドリングアームや4軸ピック&プレース構成を、より低コストで構築できます。したがって、それぞれのアプリケーションやコンセプトに応じて最適なソリューションが導き出されます。